慢性上咽頭炎の塩化亜鉛擦過療法

 慢性上咽頭炎は、口蓋垂(のどちんこ)の裏側で鼻の突き当たりにある上咽頭粘膜に慢性の炎症が生じることによって、のどの違和感や異物感、後鼻漏、鼻閉感、咳、痰、さらに頭痛、肩こり、耳閉感、倦怠感、めまいなどの症状が出る疾患です。

 上咽頭は直接目視できない場所にあります。また、症状からはどこが悪いのか判然としないことが多いため、慢性上咽頭炎と診断されることはそれほど多くありません。このため内科や耳鼻いんこう科、整形外科、脳外科、心療内科などを回って異常なしあるいは神経症と診断されてしまうことがあります。感冒薬や頭痛薬、咳止め、抗菌薬、抗アレルギー薬、精神安定剤、めまい止めなどを処方されても症状があまり改善されず、途方に暮れることとなります。そのような場合には、慢性上咽頭炎の存在を疑う必要があります。

 さらに、新型コロナウイルス感染の後遺症状と慢性上咽頭炎の症状が多くの点で類似していることから、近年両者の関連が疑われており、各メディアなどでも取り上げられつつあります。当院でもコロナ感染の後遺症としての慢性上咽頭炎の方々を診断・治療しております。心当たりのある方はどうぞご相談ください。

 正常の上咽頭を内視鏡で観察すると、写真のように薄い粘膜の表面に毛細血管が走って見えます。

正常な上咽頭粘膜

 一方、慢性上咽頭炎では電子内視鏡で上咽頭粘膜を観察すると下の写真のように特徴的な所見が認められます。

慢性上咽頭炎

 一見して粘膜がでこぼこして腫れぼったく、毛細血管が見えなくなっています。赤い点も見られ、粘膜内で出血していることがわかります。同じ部位を特殊光(NBI)で観察すると、

特殊光(NBI)観察

このように粘膜上にぶつぶつが多数生じているのが一層はっきり見えます。ぶつぶつの1個ずつはリンパ球が集合したリンパ濾胞とよばれるもので、リンパ濾胞がびっしりと粘膜を石垣状におおっていることがわかります。粘膜内の出血点も複数見て取れます。

NBI拡大図(石垣状変化)

 当院では、症状や経過から慢性上咽頭炎が疑われた場合には、特殊光(NBI)観察ができる内視鏡で確定診断をおこない、患者様のご希望に応じて塩化亜鉛溶液を上咽頭粘膜に塗布する治療(塩化亜鉛擦過療法、Bスポット療法、EATとも呼ばれます)を行っております。詳しくは、下記サイトをご参照下さい。

慢性上咽頭炎