スギ花粉症は天災?人災?

 皆さんは緑のオーナー制度というものをご存じでしょうか。林野庁が1984年から実施した、国民からの出資を募って国有林でスギやヒノキを植林し、数十年後の伐採時に販売代金の一部を出資者に還元するという制度でした。戦後の高度経済成長期に住宅に使用する木材需要が一気に高まったため、最小限の予算で成長が早いとされたスギやヒノキを全国に拡大造林し、高まる需要に応えようというものでした。

 ところが、その後海外からラワン材などの安価な製材が大量に流入したため、伐採や搬出に手間がかかる国内材はコスト的に太刀打ちできなくなりました。その結果、出資者の90%が損を被る事態となり、また伐採に適する樹齢になっても放置される林が増え、民間林も含めて手入れされない山が増えました。日本の場合、人工林の割合は森林全体の4割と世界的に突出して高く、そのうちスギ林の割合は約半分で、森林全体の18%もあります。

 私が大学生のころにすでに枯草熱(hay fever)という言葉はありましたが、まだ花粉症(pollinosis)言葉は一般的ではありませんでした。花粉症は1980年代には非常に少ない病気でした。戦後に植林されたスギやヒノキの間伐や伐採がされず、猛暑化も加わって花粉を大量に飛ばすようになり、猛烈な勢いで花粉症の有病率が高まっています。いまや2歳半の幼児のスギ花粉症がみられるくらいです。スギの開花

 昔から花粉の飛散はあったはずなのに、なぜ国民全員がなりそうな勢いでスギ花粉症が増えているのでしょうか。大気汚染、小児期の衛生的すぎる生活環境(衛生仮説)、高蛋白な食生活、抗菌薬の多用、寄生虫を腸内で飼わなくなった?(寄生虫の多い地域では花粉症が少ない)、予防医学の発展(ワクチン接種)など、複合的な要因が考えられています。とはいえ、花粉が飛ばなければ花粉症は発症しないわけですから、スギを植林しスギたのが良くなかった、という人災説がこのコラムの結論です。